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阪神・淡路大震災から30年 あの頃に緊急地震速報など現代技術が存在したら?

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2025/01/16 12:01 ウェザーニュース

明日1月17日で、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)からちょうど30年になります。

その後、2004年の新潟県中越地震や2011年の東日本大震災などが発生し、地震情報は当時と大きく変化しました。緊急地震速報など現在の技術が当時存在していたとしてシミュレーションを行い、そこから見えてきたことを考察していきます。

もし緊急地震速報があれば間に合った?

現在は定着した緊急地震速報は、2004年に試験運用が始まり、2007年から一般提供が開始されました。震源近くの観測点で初期微動(P波)を検知して計算を行い、地震波の速度よりも速い電気通信で情報を伝達するシステムです。

兵庫県南部地震の震源データを用いて、地震発生から主要動(S波)がどのくらいで到達したかをシミュレーションしたところ、現在運用中の震度観測点の中では明石市相生が最も早く4.9秒、淡路市郡家では7.9秒と算出されました。大都市では、神戸市中央区が7.5秒、大阪市中央区は14.1秒、京都市中京区は23.3秒で強い揺れが到達する計算結果となっています。

例えば2024年の能登半島地震の場合、緊急地震速報(警報)は地震波検知から4.8秒後に発表されました。地震波が最初の観測点に到達するまでにかかる時間や、緊急地震速報の発信から受信までのタイムラグを考慮すると、神戸周辺では緊急地震速報が間に合わなかったか、間に合っていても避難行動を起こす余裕がほぼなかったと考えられます。緊急地震速報があったとしても、被害の軽減に繋げるのは難しかったとみられます。

一方で、大阪市や京都市は少し時間の余裕があった分、強い揺れに対する備えをする猶予があった可能性があります。
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長周期地震動はあったのか?

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2020年に運用が開始された長周期地震動に関する情報についてはどうでしょうか。同様に兵庫県南部地震の震源データから、神戸市の2地点を対象としてシミュレーションを実施しました。

その結果、沿岸部の神戸市中央区脇浜では長周期地震動階級4、中央区山手通では階級2になっていたと想定されます。長周期震度階級4は気象庁が設定している4段階のうち最も大きな階級で、高層建築物では大きく揺さぶられたはずです。

こちらは発生時刻が早朝だったことで、高層ビルなどに居る人が少なかっため、人的被害はクローズアップされませんでした。しかし、日中であった場合は多くの被害があったと考えられ、これだけの規模の地震になると影響の拡大が懸念されます。

情報はあくまで一つの手段

今回の考察はあくまでもシミュレーションの結果を元にしていますので、実態とは異なる部分があるかもしれません。現在の地震情報にあてはめてみることで、今後発生する地震に対して少しでもイメージしやすくなれば幸いです。

兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)をきっかけに、木造建築の耐震基準が強化されました。ただ、基準ができたからといっても全ての家屋が耐震基準を満たすわけではなく、実際に熊本地震や能登半島地震でも多くの家屋倒壊が発生しました。また、高層建築物は年々増加し、長周期地震動の影響を受ける機会も増えています。

情報やインフラの強化が進む一方で、新たな脆弱性が生まれる部分もあります。地震は今後も変わることなく地球の営みとして発生する反面、生活環境は絶えず変化していきます。その変化の中で発生する地震に対する脆弱性を、早めにキャッチしておくことが、命を守るために大切となりそうです。
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